「フォースマシン」FFMC-100Mが大ヒットしている。5月の発売以降、入荷待ちの予約状態が続いていたほど。手軽さと本格的性能を両立させたこのマシンは、フィールドフォースのラインアップの中でも、これまでにない路線の商品なのだ。マシンやギアを通して、効果的な練習法を提案してきたフィールドフォースの商品群の中でも、際立った存在感を放っている。
既存ラインアップの『中間』
フィールドフォースの代表的マシンといえば、穴あきボールや、径の小さなミートポイントボール、専用シャトルを使うトスマシンやバッティングマシン──。これら個人練習向けのマシンに加え、路線としては対極にある、チーム練習向けの本格アーム式ピッチングマシンも好評を博している。
前者、個人練習向けのマシンは、室内やガレージなど、省スペースで本格的練習を実現することを目指して開発されており、アーム式マシンは日常のチーム練習、つまりグラウンドで使用することが前提となっている。
フォースマシンは、いってみれば、その2系統の中間といったところだろうか。トスマシン系よりも広いスペースを必要とし、パートナーも不要とはいかないが、より本格的な練習が可能で、個人練習でも、チーム練習でも力を発揮してくれる。より手軽に、より実践的な練習ができるマシン、ということになろう。
守備練習でも使えるマシンにしよう
2つのウィール(ホイール)を使ってボールを発射する機構は、本格的なピッチングマシンでは一般的。バッティングセンターで多いのは、この方式のマシンだ。それとは違い、フォースマシンは、ひとつのウィールでボールを飛ばす1ウィール方式。この構造のマシンも、フォースマシン以前から、すでに存在している。大きくて重く、常設して使用されることが多い2ウィール式に比べ、比較的軽く、持ち運べるサイズのものが多いのが特徴だ。
フィールドフォースが、フォースマシンを製作するにあたってこだわったのは、1ウィールマシンの手軽さを生かしながら、その機動力をさらに追及して、もっとバリエーションに富んだ使い方ができないものか、という点だ。
「当初から考えていたのは、『このマシンの仕組みなら、守備練習にも使えるんじゃないか』ということなんです」
社長の吉村尚記がフォースマシンの着想に至った経緯を説明する。
「フィールドフォースは、どこかと同じものを作る会社ではありません。常に新しいものを作って、それを世の中に提示していきたい。フォースマシンを作るにあたっても、単なるピッチングマシンではなく、守備練習にも使えるのだという部分を形にしたい、と思ったんです」
アカデミーコーチ陣が絶賛
ピッチングマシンとしての1ウィール式は、バックスピンがかかったボールが発射される。ボールに対して上向きの回転で、いわゆる「伸びる」軌道のボールだ。
フォースマシンを守備練習に使うことを考えると、マシンを上向きにセットして発射したボールは、ボールの下側をたたいたり、こすりあげた、バックスピン回転のフライと同じ球筋になる。
「実はこれ、NPB球団のアカデミーで試してもらったときに、絶賛されたんです」
吉村が説明する。
「マシンを傾けて、一塁側、三塁側に向けてフライを発射すると、実際の打球と同じように、ファウル側に向かって曲がっていく軌道のボールを飛ばせるんです。この曲がり方、ほとんど回転のかかっていないボールを打つノックでは、再現が難しいそうなんです。このマシンを使えば、より実戦に近い形のフライを捕球する練習ができる。『これは使えますね』となったんですよ」
マシンを反転させてトランスフォーム!
加えて特筆すべきは、マシンを取り外したり、組み直したりすることなく、ゴロ捕球の練習にも応用できる仕組みを形にしたことだろう。
実戦で飛んでくるゴロは、ボールの上側をたたき、トップスピンの回転がかかった打球がほとんど。ボールの下向きにスピンがかかるので、フラットな打球よりは、バウンド後に高く弾み、勢いを増す挙動を見せることになる。
「これを再現するには、マシンを逆さにすればいい」
吉村はそう説明する。とはいえ、それもなかなかの難問だとは思うが……。
「関節的な構造を入れることで、実現できないかなと考えたんです」
マシンをくるりと下向きに反転させるべく、マシンの取り付け部分を反転可能な関節にし、支柱にクランプのような「コの字」部分を作ることで、そのためのスペースを作り出す。これでマシンを取り外すことなく下向きにし、ゴロ練習用にトランスフォームできる仕組みを作り上げたのだった。
「このマシンで使えるのは、ウレタン製の専用ボール。なので、捕った後のスローイングまでは難しいのですが、少なくとも、捕球までの動きは、かなり実戦的な練習ができるようになりました」
こうして、特徴的な形の「脚」を持つ、高機能マシンが完成したのだった。
絶妙な大きさ+バーゲンプライス
もちろん、ピッチングマシンの性能を満たしていることは大前提だ。フォースマシンは重さの違う、2種類のボールを用意することで、スピードや変化球の球筋にもバリエーションを持たすことに成功している。
ただ、使用者の側にも、多少の注文が付く。発射後、ウィールを動かすモーターの回転数が安定するまでの一定の時間、7~10秒の投球間隔が必要なのだ。そのため、ユーザーには「投球ごとの間隔は約10秒以上必要です」といった注意点を各所で提示し、アナウンスしている。また、ボールを投入するときに落とし入れるか、勢いをつけて投げ入れるかでも、発射されるボールの挙動は変わってしまう。
「もちろん、モーターとウィール自体を大きく、パワフルなものにすれば、その誤差は気にならないほど小さくできるし、間隔を空けずに、続けて使えるようにもできます。ただ、その分、マシン自体が大きく重くなり、何より、価格が大きく変わってしまう。サイズ感と価格面を考えると、これがベストなんですよね」
専用レール発売で、より便利に
とはいえ、実際に使い始めると、ユーザーとしては無意識のうちに、ついついペースを早くしてしまうもの。それに対するベストな解が、最近、発売された「専用自動“供球”レール」FMC-100RAILを使用することだ。あらかじめ、専用レールにボールをセットしておくことで、自動的に8秒間隔でボールを供給口に落としてくれる、というものだ。6球までセットできるレール2つが同梱されており、連結して使うことで、12球までを自動的に発射してくれる。これなら、間隔を気にしなくても、機械に任せてボールを待てばよい。専用レールは今後、単品での発売予定もあり、4つまで連結可能、つまり24球まで自動供給が可能となっている。
実はまだ、最終形ではない……!?
この専用供給レールは電動だが、レールについたACアダプタの差し込み口は、あらかじめフォースマシンについている。レールが発売されるまでは、使い道がなかった差し込み口だ。つまり、マシンが完成した段階で、すでにレールを追加で発売することを想定していた、ということになる。
「そうですね。同時には出せませんでしたが、専用レールも開発は進んでいたんですよ」と吉村が明かす。とすれば、今後も、何かしらバージョンアップのための追加パーツなどが出てくる可能性はあるのだろうか。「もちろん、より便利に使っていただけるような追加商品を出していければ、とは思っています」
大人気のフォースマシン、最終形は一体、どんなものになるのだろうか──?